~上場企業に勤務するサラリーマンに仕掛けられた罠~
きっかけ
「きっかけ」は、意外に身近なことからでした。そう、後輩の一言。
いつ辞めるんですか、先輩
「上がらない給与」・「下がらない税率と保険料」・「上がる年齢」・「下がるマインドと下腹」
35歳 転職が難しくなる年齢 「このまま自分はココで終わるのかな」というより「どうなって終わるのか」と言ったモヤモヤが頭の中を行ったり来たり・・・
しかし、せっかく入社した会社を辞める?辞めたらどうなるんだ?退職することなど考えたこともないし、そもそも入社した時点で「将来は世のため人のために独立するぞ!」なんて微塵もなかったし。
いつ辞めるんですか、先輩
「その答えを早急に出さないといけないな」って決心したことを今でも覚えていますね。
そしてこの日を境に、少しずつ変わってゆく自分に気付き始めました。
自分の中に「変化」・「変身」への欲求があったのかもしれません。もちろん、現状から逃げ出したかったのかもしれません。
心境
心境は、毎日ぐらぐらとゆらゆら。
確かに、大手と呼ばれた企業に勤務すると「安定」・「安全」・「安心」の3大メリットに執着してました。
何か大きくて揺るがない大地の上で、守られている肌感覚はビリビリ感じていましたから。
「やりたくない事を仕事にしている」とか「ブラック企業」だったなどで、思考は脆弱化し、心身が疲弊して壊れてゆく自分が認識できていれば、辞める覚悟はつきやすいかもって言い訳ばかりして。
確かに給与の伸び率は頭打ちになりますが、それ以外にはこれと言った不満もなく、何の不自由さも感じない環境に、会社は整えてくれていました。感謝していたくらいでした。
そしてその3大メリットとはどういうものか。
- 容易に定まる
- 全てに容易
- 容易な心
とも解釈できます。にも拘らず、「それでいいじゃん!」って思っていたことも事実ですね。
綺麗な職場、整った環境、目の前には尊敬する上司や優しい先輩がいる。皆、日々仕事に明け暮れて、一生懸命頑張っている姿を目にすると・・・
「いや~、自分ごときが一念発起したところで、世の中に対して何の役に立つことがあるんだろうか、何もないじゃないか」の繰り返し。
しかも毎日同じ様な仕事をしていてすら、ミスはするし、その尻拭いを上司や会社がやってくれていると思うと・・・お客様には特に申し訳ない事ですしね。
「独立したら誰も助けちゃくれねーんだぜっ」って「速攻倒産じゃねーか」って「役に立つどころか、世間様に迷惑を掛けるだけだ」って言い訳をしていました。
言い訳ならまだまだ言っていました。「もっと資金を貯めてから」とか「親が援助してくれる裕福な家じゃないから」とか「学校で起業の勉強教えてくれなかったから」とか。こうなったらもう小さな子供よりたちが悪い。
実は、この時の心の内を代弁してくれる本に後から出会います。私にとっては読みやすく、「哲人」と「青年」の対話式で物語が進んでゆきます。
私は主人公の「青年」側に同調する格好で、目が勝手に活字を拾ってました。「人生最大の嘘」に気付かせてくれました。「嫌われる勇気」
それでも一歩、たった一歩が踏み出せずに、2年が経過したある日、またもや上司や先輩ではなく後輩から何気なく仕事に向かう車の中で相談を受けました。
この業界って独立は難しいんですか
正直「独立したことがないから、わかるわけないだろ」としか言いようがない。それより、なぜ私にそんなことを聞いてきたのか。
しかし、その後輩の彼の眼は、とてもキラキラしていたことをよく覚えています。
勇気が欲しかった。ただ足りないのは勇気。年齢や経験、見てきたことや知ったことの量だけではない。若くても怖気づいたり、後ずさりする。そりゃそうさ失うものと、失うかもしれないものがチラつくから。
悩み、もがいている間に、ものすごい膨大な時間が流れました。結局、ずーっと天秤はつりあったままの状態でした。
ところがある日、突然吹っ切れたんです。理由は今もわかりません。考えすぎて線が切れた感じです。「ダメだったら最初からやり直そう」「できる限り何度でも」って。
その後
後になって知ったのですが、送別会を開いてくれた際に、あの時の質問をしてきた後輩に教えてもらいました。あの時、なぜいつ辞めるんですか、先輩って聞いてきたの?と尋ねたら、きょとんとした顔で何時か辞めるんですか、先輩だったそうです。
大笑いです。その後輩も2年後に独立。
考えているときは、テコでも動かなかった自分自身だったのに、嘘のように身軽に変身しました。もちろんその先に待ち受けている苦難には、この時まったく気づいていないのですけどね。