こんにちは。Hideです。売買不動産歴20年以上 大手不動産会社15年勤務後、関西で不動産会社の代表取締役 現在は賃貸物件のオーナー、投資家、ブログ記事も7年近く書いています。
今回は、「既存住宅売買瑕疵保険」への加入が不動産の購入時や売却時に有効な理由について紹介したいと思います。個人的な見解ですので参考にしていただけたらと思います。
この記事の内容 | レベル |
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知っ得度 | ★★★★☆ |
重要度 | ★★★★☆ |
専門性 | ★★☆☆☆ |
単純明快!「加入したことで成約した」から。
コンテンツ
「既存」という言葉のとおり「中古」の住宅が対象となる保険です。この保険に加入している不動産を購入すると得られる安心をご紹介します。
はじめに「既存住宅売買瑕疵保険」への加入ができるのは「宅地建物取引業者」もしくは「検査事業者」となります。事業者が瑕疵保険に加入すると「保証書」と「保険付保証明書」が買主に交付される仕組みです。
保険の対象は「柱・基礎などの構造耐力上主要な部分」と「外壁・屋根などの雨水の侵入を防止する部分」の2本立てになっています。
売 主 | 宅地建物取引業者 | 宅地建物取引業者以外 |
保険名称 | 売買瑕疵保険 | 個人間売買瑕疵保険 |
建物検査 | 保証会社の検査員(建築士) | 検査事業者または保証会社の検査員 |
保険期間 | 引渡し日から2年または5年 | 引渡し日から1年または5年 |
支払限度 | 500万円または1,000万円 | 500万円または1,000万円 |
実際に加入している「株式会社住宅あんしん保証」を例に具体的な内容を一部紹介したいと思います。まず「既存住宅売買瑕疵保険」は大きく3つに分かれています。
売主(宅地建物取引業者)が利用する保険で、売買された既存住宅の構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分などの瑕疵(欠陥)による不具合の修補等を行う資力の確保を目的とします。
- 売主である宅建業者は、売却後の瑕疵担保責任のリスクヘッジができます。
- 買主が抱える住宅購入の不安の解消策として、あるいは競合他社との差異化等に役立てることができます。
- 買主の住宅購入の不安を解消し、一定の要件を満たせば税制優遇等の適用を受けることができます。
売買契約を代理または媒介し、買主に保証を提供する仲介事業者が利用する保険で、売買された既存住宅の基本構造部分の隠れた瑕疵(欠陥)による不具合の修補等を行う資力を確保を目的とします。
- 建築士による現場検査を行った上で保険の引受けを判定するため、安心・安全な既存住宅としてアピールすることができます。
- 仲介事業者が買主に提供する保証に対して、資力確保ができます。
- 買主に対して売買物件の保証を提供し他社との差異化を図りつつ、その保証に対する資力確保ができます。
- 「保険付保証明書」を各種税制特例の適用を受ける際に活用できます。
- (詳しくは税務署または市区町村等の窓口にご確認ください。)
その住宅を検査した事業者が利用する保険で、売買された既存住宅の構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分などの瑕疵(欠陥)による不具合の修補等を行う資力を確保を目的とします。
- 売買物件が保証付住宅になることで営業力強化に繋がります。
- 現場検査を行うことで買主に安心を提供できます。
- 買主が利用する住宅ローン減税の対象が拡がります。
- 引渡後、保険の対象となる基本構造部分に万が一瑕疵があっても、1年間または5年間保険によるバックアップで資力確保ができます。
主となる保険内容に付随する形で、享受出来る可能性のある6つのメリットについてご紹介します。
メリット | 効果内容 |
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住宅ローン控除制度 (国税庁HPはここから) | 個人が住宅ローンを利用して住宅を取得した場合 (新築、新築住宅の購入中古住宅の購入、住宅の増改築など) 一定の割合にあたる金額が所得税から控除される制度 |
特定居住用財産の買換え特例 (国税庁HPはここから) | 売却する住宅よりも高い金額の住宅に買換えして 住み替える場合、元の住宅の譲渡益にかかる譲渡所得課税を 先送りする事ができる制度 |
相続時精算課税選択の特例 (国税庁HPはここから) | 親や祖父母からそれぞれ最大2500万円までの贈与について 贈与税が非課税になる制度 |
住宅取得等資金の非課税制度 (国税庁HPはここから) | 父母や祖父母などから住宅取得のための資金の贈与を受けた場合 一定の要件を満たすときは、贈与税の申告をすることにより 一定の金額について贈与税が非課税となる制度 |
住宅用家屋取得に係わる取得税特例 (大阪府HPはここから) | 取得した耐震基準適合既存住宅の新築年月日に応じた額が控除 |
居住用宅地に対する取得税特例 (大阪府HPはここから) | a 45,000円 b 土地1平方メートル当たりの価格 ×住宅の床面積×2×3% 上記 a、b のどちらか高い方の額が土地の税額から減額 |
かなりメリットがあるのではないでしょうか。これは「既存住宅売買瑕疵保険」への加入条件に「建築士等が行う住宅の調査等により、耐震基準に適合していることの証明がされたもの」が挙げられるため、購入者側の心理上は「保険に加入できている物件は安心」といった影響を与える材料にもなります。
「既存住宅売買瑕疵保険」の制度は、平成22年4月より国土交通大臣が指定する下記の5法人によって取り扱いが認められてスタートしました。まだまだ歴史も浅いため聞きなれない言葉ですが「知っていれば得をする」といっても過言ではないでしょう。
この保険への「加入が任意」であることと、「費用負担」や手続きの煩雑さから当初はなかなか広がらなかったようですが、現在では利用する方が増えてきています。
実際に依頼したことのある保険会社を含めて、代表的な「既存住宅売買瑕疵保険」取り扱い法人をご紹介します。
法人名 | ホームページ |
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株式会社住宅あんしん保証 | https://www.j-anshin.co.jp/ |
株式会社ハウスジーメン | https://www.house-gmen.com/ |
株式会社日本住宅保証検査機構 | https://www.jio-kensa.co.jp/ |
住宅保証機構株式会社 | https://www.mamoris.jp/ |
ハウスプラス住宅保証株式会社 | https://www.houseplus.co.jp/ |
購入する側にメリットがあると言うことは「売主にとってもメリット」になると言うことです。他の物件と比較されがちな現状を踏まえると、競合相手と差別化ができて、より選んでもらいやすくなるわけです。
既存住宅売買瑕疵保険にかかる費用は、「保険料+検査料」です。但し、保険商品取り扱い法人によって多少の上下はあります。また保険料の算出には、不動産の大きさや保険期間、保険金額などの設定により変わります。
保険料 | 2~4万円 |
検査料 | 5~10万円 |
無事に全ての手続きが完了して、検査に合格するとこのような「検査完了書」が届きます。加入の検討をされるのであれば、上表記載の各保険商品取り扱い法人のホームページにてご確認ください。
既存住宅売買瑕疵保険に加入する手前の段階に「インスペクション」があります。インスペクションとは、住宅の設計・施工に詳しい建築士などの専門家が、住宅の劣化や不具合の状況について調査を行って、欠陥の有無や補修すべき箇所、その時期などを客観的に検査するものです。
「保険的側面はない」のですが、売主と買主が各項目について共通の認識を持った状態になり、事前に不具合箇所がわかっているだけで安心して購入の意思決定ができるようにすることや、交渉ができるようにすることで不安を解消して取引を行うことができ、引き渡し後のトラブルを大幅に軽減する効果を得ることができるというものです。
これまで既存住宅の取引を行う場合、売主も買主も個人であることが多く、売買の対象となる物件状態について正確な情報を相互理解できないまま取引が行われ、後になってトラブルになることが多くありました。
国土交通省は平成25年6月に「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を発表して「基本的な考え方」・「検査内容」・「検査項目」・「検査の手順」などを提示しています。
「基本的な考え方」
検査結果が、どの検査事業者が行ったかによらず同様の結果が得られるよう、現時点で得られている知見や一般的に用いられている検査技術等に基づいたものとすること。ほか
国都交通省
これまで民間に機関が行っていた調査には、一定の基準というものがなかったために結果に大きなばらつきが目立っていました。今回のガイドラインによりかなり精度が上がったと思います。
「現況検査の内容」
現況検査の内容は、売買の対象となる住宅について、基礎、外壁等の住宅の部位毎に生じているひび割れ、欠損といった劣化事象及び不具合事象(以下「劣化事象等」という。)の状況を、目視を中心とした非破壊調査により把握し、その調査・検査結果を依頼主に対し報告することである。ほか
国土交通省
実際に調査に立ち会うとわかりますが「目視が中心」であるため、建物内部(床下や屋根裏、外壁内部等)については精度を欠くことは当然あります。
「既存」住宅は自然災害をはじめ、太陽の日の光や雨風にさらされているために経年劣化が至る所に存在することは避けられない事実です。
「検査項目」
検査項目は、検査対象部位と確認する劣化事象等で構成され、劣化事象等については部位・仕上げ等の状況に応じた劣化事象等の有無を確認することを基本とする。
確認する劣化事象等としては、以下を基本とする。
① 構造耐力上の安全性に問題のある可能性が高いもの (例)蟻害、腐朽・腐食や傾斜、躯体のひび割れ・欠損等
② 雨漏り・水漏れが発生している、又は発生する可能性が高いもの (例)雨漏りや漏水等
国土交通省
「劣化事象等の有無を確認」では、一部の悪徳業者間によって事実と異なる報告をおこない「リフォーム工事」を促して利益を上げるといった事も横行したことがありました。
「検査の手順」
インスペクション業務の依頼申込みに際して、依頼主から、依頼書と合わせて以下の事項について書面等により提出してもらうことを基本とする。
検査対象住宅の基本的な情報(所在地、構造・工法、階数・規模、建築時期、リフォーム等の実施状況)
依頼主と住宅所有者や居住者が異なる場合、現況検査を実施することに対する住宅所有者及び居住者の承諾
現況検査を実施する際の立会人(売主、仲介業者等)の氏名・連絡先等
国土交通省
こうしたガイドラインができたことにより、売買契約の円滑化が見込まれていました。しかしながら「依頼が任意」であることや「費用負担が発生」することで当初から加入件数はそれほど多くはありませんでした。
※費用負担は調査実施の了解を頂けた場合、売主、買主どちらか、もしくは負担割合を決めて行っても良いことになっています。
調査以来の結果「問題なし」なら安心を得る事ができ、自信をもって販売が出来るわけですが、「売主が費用を負担する」➤「程度に関係なく不具合箇所を指摘される」➤「買主に公開する」➤「価格交渉に利用される」もしくは「購入を断念される」といった悪循環を未だに立ち切れずにいる状態ではないでしょうか。
最近では購入や売却の依頼を受けた仲介会社による「インスペクション」の斡旋やサービスが設けられてきました。このことで少しずつではありますが、認知されやすくなり中古市場の流通に影響が出始めていますね。
- 既存住宅売買瑕疵保険は売主・買主双方に安心とメリットがある
- 既存住宅売買瑕疵保険は買主が抱える住宅購入の不安の解消策として利用できる
- 既存住宅売買瑕疵保険は競合他社との差異化等に役立てることができる
- 既存住宅インスペクション・ガイドラインにより今後さらに売買契約の円滑化が見込まれる
無理なくやって、今日もHappy!