こんにちは。Hideです。売買不動産歴21年以上 大手不動産会社15年勤務後、関西で不動産会社の代表取締役 現在は賃貸物件のオーナー、投資家、ブログ記事も8年近く書いています。
今回は「中古戸建を購入」しようと考えている方に絶対確認してほしい「敷地の上空」と「敷地の地中」について紹介したいと思います。個人的な見解ですので参考にしていただけたらと思います。
この記事の内容 | レベル |
---|---|
知っ得度 | ★★★☆☆ |
重要度 | ★★★★☆ |
専門性 | ★★☆☆☆ |
敷地内に越境物があると建物を建築できない場合がある。
コンテンツ
立地や形状が気に入って、その「土地に魅力」を感じて購入を検討している場合、その多くが「古家付の中古戸建」だったりしませんか?
すると現地で不動産の確認をするとき、どうしても建物に目が向かってしまいがちです。普段住んでいる自宅に帰るような感じ。玄関を見たり、トイレやキッチンを見たり。
家を見ることは重要です。どういう大きさの家が建っていて、どんな間取りなのかといったスケールイメージを感じ取ることができるからです。
そして敷地の境界プレートや境界線の確認をしますよね。実際どこからどこまでを「資産として購入」するのか心配だからですね。
土地の購入にはもう一歩踏み込んで確認すべきものが幾つかあります。中でも「敷地の上空」と「敷地の地中」は重要ポイントです。
ここ結構見落としがちなんですよ。更地を購入する場合と違って建物に意識が向いてしまうからです。「見落としちゃてたぁ」では済まされないことになります。
敷地内に入ったらまず上空を見上げてください。特に多い事例は「電線」と「電話線」と「ケーブル線」が電柱から引き込まれていると思います。
「そんなもん当たり前ちゃうの?」となるところですが、これが「隣家のための」配線だったりします。お隣りの家へ引き込まれている各線が上空を通過していることって「メチャクチャ多い」んですよ。もちろん逆もあります。
「そりゃ、隣家にお願いして引き込み直ししてもろたらええんとちゃうのん?」って思うでしょ?ですが勝手に自分ですることはできませんから、電力会社に依頼することになりますよね?
電力会社は電線の利用者に確認して移動させる場合が多いのですが「移設に同意しない」・「もう一本電柱を建てないと移設が難しい」・「利用者が不在で連絡が付かない」などが発生したらどうしますか?
「はみ出ているひさしを切断してください」と伝えに行ったこともあります。なぜなら「予定する建築物とひさし部分がぶつかってしまうから」だけではありません。
「建蔽率」は敷地の上空からの水平投影面積で計算されるので、予定している建築物の大きさまで影響が出てしまうからです。以前こんな状態の土地を検討したことがあります。
結論としては、このままでは「購入予定地に住宅の建築は不可」となります。
隣家のひさしが水平投影面積に算入されてしまい、敷地と道路の関係において間口部分から建物を有効に建築できる場所までの「専用通路部分」において途中から「2m未満」の箇所が出来てしまうからです。
この時は「切ってもらって結構ですよ」という奇跡的なことが起こって助かりましたが。そもそも越境している側に問題があるといえばあるのですが、杓子定規に話をしたら決裂することもありますね。
上空と比べて悩ましいのが地中です。「えっ?地中に何か問題でもあるんかいな?」ですよね。あるんですよね。
ですが購入前から勝手に他人様の敷地を掘り返すわけにはいきません。(特例的には事前に交渉して原状回復することを条件に許可してもらうことはあります)
「井戸」って最近では見ることは少なくなってきていますが、昔は各家庭にあったくらいたくさんありました。
かつて「井戸」は人間が生きていくうえで最低限必要な「飲み水」をもたらしてくれており、「神様」がいらっしゃると考えられてきました。
ではその「井戸」が敷地にあった場合です。まず、建物基礎部分に「井戸」があれば荷重を均等に分散させるため当然埋め戻さなくてはなりません。
しかし、周囲の地層と同じ土や砂で埋めることは難しく、また自然に圧密された土地と人工的に転圧を掛けた土地では応力が異なる場合も考えられます。
ひどい時には圧密沈下を起こすことも考えられます。ですが最近の施工技術の向上もあって改良された施工方法で問題もほとんど起こっていないのも事実です。
井戸を埋める際には神主様に「お祓い」をされる場合もあります。また、「息抜き」といって塩化ビニル製のパイプを差し込んで埋め戻したりします。
埋め戻しにかかる費用だけでなく、地盤耐力の心配を解消する必要があることを知っておくことが先決です。
最近では逆に見直されてきた「し尿浄化槽」です。水洗へ切り替える際に敷地内に埋め込まれた容器が取り除かれているかの確認が必要です。
大半はそのままの事が多いのが現実です。撤去に費用が掛かるため容器内の汚物を抜き取った後、砂や砂利を詰め込んでそのままにしている現場は数知れずありました。
所有者に確認をしても「取り除いたかしら?」「忘れちゃったわぁ昔のことだから」と、たいてい覚えていらっしゃらない事の方が多いです。敷地を見て回るとそれらしき跡が発見できることもありますが、コンクリートで蓋をされていたりして、まず確認できません。
「し尿浄化槽」は井戸ほど深く掘り下げたりしてはいない事が多いので、地盤体力に影響が出ることは少ないと考えられています。いずれにせよ撤去費用が掛かります。撤去後に埋め戻す土も結構な価格になることが多いです。
よくある事例がこれではないでしょうか。「購入検討地への引込管が他人地を経由している」または「他人地への引込管が購入検討地を経由している」です。
これもだいたいの見当はつくものの、実際には地中で配管が曲がっていたりして確定することは難しい事が多いです。
最近の金融機関での融資条件には「越境物等は解消してください」となっております。こんなケースがありました。
こういったケースは割とよくあり、他人地経由で飲用水を引き込んでいるパターンです。この場合、水道管の引き込み直しをすることを隣地へお声がけして了承して頂くことになります。つまり費用が掛かるということです。
「歴史的文化財産」や「不発弾」なんていうことも当然いまだにあります。「不法投棄されたごみ」なんていうものあります。一番多いのは「大きな石」や「大きなコンクリート片」ではないでしょうか。
むかし昔の建築では、「割栗石」といった少々大きな石を小端立て状に敷地に敷き詰める工法を採用しており、掘り返すと無数の石が出てくる場合があります。また、もともと大きな鉄筋コンクリート造の建物があった場所などでは「地中梁」の残骸が出土するケースもあります。
これらの地中内に埋まっている物は、新たに建築を行う場合すべて除去・撤去しなければならない事がほとんどで、その費用は膨大になることもあります。
逆に「歴史的文化財産」や「不発弾」は勝手に除去・撤去は出来ないことになっております。そうなると、その間土地の有効利用が出来なくなってしまいます。
これも結構よくある越境です。この場合は少し厄介なことになります。購入検討地側にも境界線に沿ってコンクリートブロックを建てようとすると、隣地上にある既存のコンクリートブロックの基礎が地中内で障害になり「背中合わせに造作する事が出来ません」
これは「地中内越境」となるのですが、隣地所有者に相談しても上手く商談を進めることは難しいことが多いですね。
- 検討するのが土地なら、古家付であっても建物ばかりに目を奪われない
- 敷地に入ったらまず上空を隅々まで見渡す
- 足元に目を向け、敷地の周囲に何か埋められた跡がないかを必ずチェック!
- 事前に予想しておき、万一の場合の対処方法を考えておく(場合によっては交渉材料にする)
今回は、土地の購入を検討する場合の目線で紹介させて頂きましたが、中古戸建として購入する場合も同じです。その場合は更に建物についても確認が必要となります。
十分に納得いくまでチェックを怠らずに「失敗しない不動産購入」をするための参考になれば嬉しいです。
無理なくやって、今日もHappy!